お客様がイギリスで購入された古いウィンザーチェアーをお持ちで、木の鑑定士として「開運なんでも鑑定団」にも出演されている村山元春さんの鑑定によるとおおよそ100年前の物だそうです。
修理を依頼されて拝見したとき、継ぎ手のあちこちが緩くなって座面もヒビが入っており今にも割れそうでしたが、直す事の出来る物でしたので修理依頼を受ける事が出来ました。
お客様はこの椅子を大変気に入っていらっしゃって「常々もう一脚あればと思っていたんだけど、同じ物作れるかな?」と言われ興味が先行して「はい!できますよ。」と即答、上の写真の左が私どもで製作した物で右がオリジナルです。
修理の準備とともに各部品の寸法をとったりしながら継ぎ手の細かい部分を見ていると、凄まじい精度の高さにまず驚きました。そして部品ぞれぞれに適した材料を使い分けてあり、座面は世界三代銘木の一つ「マホガニー」、背のフレームは曲げやすい楡材(ニレ)、ボウ(矢)と呼ばれる背の細い棒は座面と同じくマホガニーですが目の詰まっていて木材の繊維方向が縦にまっすぐのびている最良材を使っていたりと、気を使っているのがよくわかります。
作り進めて行く間に、ある種オリジナルの製作者に尊敬の念が芽生えてきました、というのもこれだけ装飾細工を施しておきながらどこから見ても綺麗に見え、誰も気にしないような小さな部分でも「こうじゃなきゃダメ」という美意識を感じる事が出来るのです。
わたしの勝手な憶測ですが製作者は何年も掛かって全体のバランス、ディティール、技術を進化させて行きたどり着いた作品ではないかと思います。
私どももオリジナルのチェアを製作するので良く分かるのですが、ここまで完成度の高い椅子を作るには一回や二回の試作ではとても足りず、ましてや図面上ではここまで立体的なフォルムを把握しきれるものではありません。
毎日のようにウィンザーチェアーを作りながら「もっとこうしたらよくなるかな?」「次はこうしよう」を繰り返し、たどり着いたのがこの形ではないのかと。
まあこれは全くの憶測でただの大天才が一発で作ったのかもしれません…。
この椅子を作って学んだことは「こだわり続ける事がいかに大事か」という事を学ばせて貰いました、
このような機会を与えて下さった、お客様と村山さんにとても感謝しております。